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インドネシア文化宮(GBI)が長い年月を費やして収集してきた逸品・絶品です。日本ではまだまだプリミティブ・アートに関して理解が薄く、愛好者が少ないのが現状ですが、この機会に世界的、博物館レベルの品々に触れていただけましたら幸いです。 世界的に有名なイリアンジャヤ州南西部のアスマット原始美術。その芸術性の高さは、ニューヨークにあるメトロポリタン美術館に「アスマット・コーナー」があることからも窺い知ることができます。プリミティブ・アートは、日本ではまだまだ愛好家そして理解者が少ないのが現状ですが、欧米諸国では、芸術品コレクターにとって『いつの日か、アスマット彫刻を手に入れたい』と、垂涎の的。特に戦闘楯やサゴ椰子皿、そしてビスポール(祖霊像トーテンポール)などが知られていますが、ここに紹介する「Jipae(祖霊の衣装)」も、学術的解明が未だ完璧とはいえませんが、アスマットを代表する仮面アートです。 まさに博物館クラスの極希少品です。 ジパエ(Jipae)は、同名の祭り---それも数ヶ月間に及ぶことも決して稀ではない---を通じて、特別に選ばれた者たちによって製作されます。数年に一度開催されるというその祭りは、故人、殊に村の長老や酋長格の人物の死を悼み、現世から霊界への聖なる旅立ちを願って行われます。従って、漠然とした祖霊を指すのではなく、前回のジパエ祭りから最新のジパエ祭りまでの間に亡くなった特定の偉人を具体的に表現しています。 製作グループの選出に始まり、森での材料探し、そして男だけが入室を許されるイョウと呼ばれる集会所の片隅での製作段階まで、全ては神聖な儀式に則って進められます。しかし、キリスト教が浸透した現在では、ジパエ祭りは形式的なものとなりつつあります。 写真のジパエは、アスマット地方の中心地アガッツで1980年代に入手したものです。1960年代にカスアリネン海岸一帯にある村で製作されたとのことです。 フム(Fum)と呼ばれる特別な樹木の樹皮を乾燥させ、その繊維から編んだマスク。サイズは、平らに押し広げた状態で、横幅が約28cm、縦が約28cm。かぶる状態に吊り下げますと、高さは約32cm、横幅は約22cm。目の両端の間隔はおよそ15.5cm。眼孔のサイズは約5 X 4.5cm。貝の一種で作った鼻輪は、横が約15.5cm、高さ約7cm。頭周はおよそ62cmで、これ以下のサイズの方であれば、実際に被ることもできます。 アスマット地方の神話である「フメリピッツ(創造主で“風の人”の意味)」に拠れば、天から地上に降りてきた創造主は、丸太をくり貫いて男女の像を彫った。次に太鼓を作った。トカゲの皮で覆って、太鼓を打ち鳴らすと、その男女の人形は立ち上がり、リズムに合わせて踊り、歌い始めた。そうして人間としてのアスマット人が誕生した、と。つまり、人間は木から生まれたという神話です。「アスマット」とは、地元の言葉で「真実の人間」、「我々は木だ」を意味します。木から生まれたと信じるアスマット人は、死ぬと身内の手で木の彫刻になります。
この神話に根ざした風習によって、アスマット地方では、今や世界的なプリミティブ・アートの宝庫と呼ばれるまでに彫刻文化が異常に発達したわけです。木に“還す”ためにビス・ポール(祖霊像)が彫られるわけですが、一方で、「ジパエ祭り」を通じて、故人は霊界へ送られるのです。 アスマット彫刻に関しては『Asmat Art:Wood Carvings of Southwest New Guinea』(Periplus社刊)、『西イリアン探検(II)』(1981年、日本テレビ発刊・読売新聞社発売・大川誠一著)、『祖像の民族誌』(小林眞著・蹲踞館発行)などを参照してください。 インドネシア文化宮は、インドネシアの24時間ニューステレビ局『メトロTV』東京支局がプロデュースするインドネシア情報発信基地です。 インドネシア文化宮ブログサイト
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